
第一想起とは、特定の製品やサービスをイメージした際、消費者の頭に一番初めに浮かぶブランド名のことです。第一想起を獲得できれば、顧客は他社と比較しなくても、商品を選んでくれます。
ブランディングにおいて第一想起が重要である理由として、以下があげられます。
この記事では、第一想起を独占して選ばれ続けるブランドや、測定方法、重要である理由、成功させるポイントを解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
第一想起を独占して選ばれ続けるブランドの5つの成功事例
多くの競合が存在する中で、消費者の記憶を独占しているブランドには、共通の戦略的な背景があります。ここでは、第一想起を見事に獲得して、圧倒的なシェアを維持している代表的な事例を紹介します。
事例①スターバックス

「スターバックス」は、単なるコーヒー販売店としてではなく、家庭でも職場でもない「第3の場所(サードプレイス)」を提供することで第一想起を獲得しました。
日本ブランド戦略研究所の調査でも、カフェ業界におけるブランド力で常に首位を争っており、体験が記憶を作る好例です。場所という価値を提供することで、他社が価格競争に苦しむなかで、高い顧客ロイヤリティの維持に成功しています。
「リラックスしたい時はスタバ」という強固な回路が、消費者の脳内に作られています。
事例②Apple

「Apple」のiPhoneは、説明書なしで使える直感的な操作性と、洗練されたデザインによって、スマートフォンの代名詞となりました。「新しい体験がしたいならApple」という期待感を顧客に植え付け、新作が出るたびに行列ができるほどの想起力を誇ります。
IDC Japanのデータによれば、日本のスマホシェアでiPhoneが圧倒的なのは、機能差を超えたブランドの想起性が寄与しています。一貫した美学と使い勝手の良さが、競合製品への乗り換えを防ぐ強力なバリアとして機能しているのです。
参考:2025年第2四半期の – 国内携帯電話・スマートフォン市場実績値を発表|IDC
事例③星野リゾート

「星野リゾート」は、各地域の魅力を最大限に引き出すコンセプト設定により、旅行先を検討する際の第一想起を独占しています。「特別な旅行なら星野リゾート」というイメージを確立したことで、高価格帯でありながら驚異的な稼働率を実現しました。
ハード面だけでなく、スタッフによる独自のサービスというソフト面で顧客を魅了し続けています。期待を超える驚きの提供が顧客の記憶を強化して、次回の旅行でも真っ先に名前があがる仕組みを構築している企業です。
事例④ニトリ

「ニトリ」は、「お、ねだん以上。」というキャッチコピーを徹底的に浸透させて、家具・インテリア選びの第一想起を勝ち取りました。手頃な価格でありながら品質にも妥協しない姿勢が、幅広い層の消費者に「まずはニトリに行こう」と思わせる動機を作っています。
株式会社日本経済新聞社の報道でも、製造物流小売業という独自のモデルによる競争力の高さが評価されています。生活に密着した課題解決を提示し続けて、住まいに関する困りごとの相談先として不動の地位を築きました。
参考:32期増収増益の「ニトリ」がつくった物流でもうかる仕組み|株式会社日本経済新聞社
事例⑤日本マクドナルド

「日本マクドナルド」は、圧倒的な店舗数とスピーディーな提供により「手軽な食事といえばマクドナルド」という第一想起を確立しました。期間限定メニューの展開やアプリを活用した利便性の向上により、常に消費者の意識の中に留まる工夫を続けています。
ハッピーセットを通じた子どもの頃からのブランド体験が、世代を超えた想起の連鎖を生み出しています。どこにでもある安心感と、期待を裏切らない定番の味が、空腹時の意思決定において最強の武器です。
なお、ブランディングのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【初心者必見】事例に学ぶ!ブランディングの5つのポイント
ブランドの現在地を正確に把握する第一想起の3つの測定方法
自社のブランドが顧客の記憶にどれほど深く刻まれているかを客観的に知ることは、戦略の成否を分ける大切なプロセスです。ここでは、ブランドの現在地を正確に把握するために有効な測定アプローチについて詳しく解説します。
方法①自由想起アンケートでトップオブマインドを特定する
古典的かつ信頼性の高い方法は、ターゲット層に対してヒントを与えずに行うアンケート調査です。「〇〇といえば、どのブランドを思い浮かべますか?」という質問に対して、最初に回答されたブランドが「第一想起(トップオブマインド)」となります。
消費者の脳内で最前列に配置された記憶は、意思決定の瞬間に強力な影響力を発揮します。定期的な調査によって、自社の施策がターゲットの記憶の定着に寄与しているかを客観的に評価しましょう。
方法②指名検索数のボリュームをツールで可視化する
デジタル領域における想起の強さは、Googleなどでブランド名や商品名を直接入力して検索する「指名検索数」で測定できます。キーワードプランナーやGoogleトレンドを活用して、特定のキーワードと自社ブランド名がセットで検索されている頻度を確認しましょう。
広告による一時的な流入ではなく、自然検索によって指名されている数が多いほど、第一想起が定着していると判断できます。競合他社と比較した際の指名検索シェア(シェア・オブ・サーチ)を追うことで、市場での立ち位置が明確になります。
方法③SNSのシェアオブボイスで記憶の定着度を測る
SNS上で特定のカテゴリーについて言及される際、自社のブランドがどの程度の割合で含まれているかを分析する方法です。これを「シェア・オブ・ボイス(SOV)」と呼び、消費者の日常会話の中にどの程度ブランドが入り込んでいるかを可視化できます。
単なる言及数だけでなく、どのような感情(ポジティブ・ネガティブ)とともに語られているかを分析することも大切です。好意的な文脈でブランド名が頻繁に登場していれば、質の高い第一想起が構築されている理想的な状態といえます。
ブランディングにおいて第一想起が重要である3つの理由
第一想起の獲得は、単なる知名度向上以上の劇的なメリットをビジネスにもたらします。ここでは、第一想起が重要である理由をご紹介します。

それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
理由①比較検討のプロセスをスキップして指名買いを促す
第一想起の重要性は、顧客の意思決定プロセスから「他社との比較」という工程を排除できる点です。消費者は何かを必要とした瞬間、最初に思い浮かんだブランドをそのまま購入する傾向が非常に強いといわれています。
比較の土台に乗る前に選ばれる「指名買い」の状態を作れるのは、第一想起を獲得したブランドだけの特権です。これにより、価格競争に巻き込まれることなく、安定した利益の確保が可能です。
理由②広告依存から脱却しマーケティング費用を削減する
第一想起を得ているブランドは、多額の広告費を投じなくても顧客が自然と集まるため、非常に高い収益性を維持できます。検索エンジンで一般名詞ではなくブランド名で検索されるようになれば、リスティング広告などのコストを大幅に削減可能です。
一度「その分野の定番」として記憶に定着すれば、口コミやリピート購入による自然な流入が継続的に発生します。広告に依存しない集客構造を構築できることは、長期的な経営の安定において大切な要素となります。
理由③競合他社の参入を阻む強固な参入障壁を構築する
消費者の記憶の中に確立された「指定席」は、後発の競合他社が簡単に奪い取れるものではありません。第一想起を獲得していることは、それ自体が競合に対する強力な参入障壁として機能しやすいです。
競合が類似の商品を安く提供したとしても、顧客の脳内に深く刻まれた信頼感があれば、ブランドスイッチを防げます。市場での優位性を揺るぎないものにするために、第一想起の獲得は避けて通れない戦略目標となります。
第一想起を獲得して集客を成功させるための3つのポイント
第一想起を獲得するには、単に名前を知ってもらうだけでなく、顧客の悩みが発生した瞬間に、自社のブランドが真っ先に解決策として浮かび上がる仕組みを構築しなければなりません。ここでは、集客を最大化して、顧客の記憶の特等席を確保するために欠かせないポイントを深掘りして解説します。

それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
ポイント①ターゲットを絞り独自の価値を定義する
第一想起を勝ち取るためには、まず「どの分野で1番になるか」を明確に定めなければなりません。市場全体で1位を目指すのではなく、特定のニーズを持つターゲット層に絞り込み、独自の立ち位置を確立しましょう。
「安さ」や「品質」といった曖昧な言葉ではなく、顧客の特定の悩みを解決する唯一無二の存在として自己を定義してください。ターゲットを絞り込むと、顧客の記憶に深く刻まれやすくなり、想起の可能性が向上します。
ポイント②繰り返し接点を持ちブランド体験を深める
想起を維持するためには、顧客との接触回数を増やして、記憶を強化するプロセスが必要です。ザイオンス効果(単純接触効果)を活用して、SNSやメルマガ、広告などを通じて定期的にブランドを思い出してもらう工夫をしましょう。
単に名前を売るだけでなく、顧客が驚いたり感動したりするような良質な体験をセットで提供することが大切です。期待を超える体験は強固な記憶となり、いざという時に真っ先に選ばれる動機を作り出します。
ポイント③感情に訴えかける一貫したメッセージを発信する
消費者の記憶に残りやすいのは、論理的なデータよりも感情を揺さぶるストーリーやメッセージです。ブランドが持つビジョンや背景を言語化して、一貫したトーンで発信し続けることで、情緒的なつながりを構築してください。
ロゴのデザインから文章の語り口まで統一感を持たせると、ブランドの輪郭がはっきりします。「このブランドなら自分の気持ちを分かってくれる」という信頼感が、第一想起を確固たるものに変えてくれます。
なお、コンテンツマーケティング戦略の立て方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:コンテンツマーケティング戦略の立て方を7ステップで解説|成功のコツもご紹介!
第一想起でよくある3つの質問
第一想起でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①第一想起を測定する頻度はどのくらいが適切ですか?
市場の変化やキャンペーンの効果を正しく評価するため、少なくとも半年に一度、あるいは四半期ごとの定期的な測定を推奨します。定点観測を継続すれば、ブランド戦略の成否を客観的に判断でき、迅速な軌道修正が可能です。
業界のトレンドが激しい場合は、より短いスパンで測定を行い、競合の動きに遅れないよう注意してください。自社の施策が顧客の記憶にどれだけ定着したかを数値で追うことが、長期的な成長を支える鍵となります。
質問②測定結果が低かった場合、まず何を見直すべきですか?
測定結果が低かった場合、まずはターゲット設定と提供価値の整合性を真っ先に見直しましょう。「誰に、何を伝えるブランドか」という根本的なコンセプトが曖昧なままでは、消費者の記憶に残ることは困難です。
ターゲットを広げすぎず、特定の悩みやシーンに特化したメッセージへと研ぎ澄ませることが改善への最短ルートとなります。また、すべての顧客接点で一貫したブランド体験を提供できているかも大切なチェックポイントです。
質問③デジタルツールだけで測定を完結させてもよいですか?
デジタルツールは数値の推移を追うのに便利ですが、消費者の生の声を拾えるアンケート調査と併用するのが理想的です。検索数やSNSの言及数といった定量的なデータだけでは、ブランドが「なぜ」選ばれたのかという心理的な背景までを深く読み取れません。
定量データで「認知の広さ」を測りつつ、インタビューや記述式アンケートで第一想起の「質」を確認してください。多角的な視点から分析を行えば、数値に現れない課題や新たな強みを発見できる可能性が高まります。
第一想起を獲得して唯一無二のブランドになろう!
第一想起を獲得することは、競合との激しい価格競争から脱却して、長期的な安定経営を実現するための最短ルートです。成功している企業は、一貫したメッセージと良質な体験を通じて、顧客の記憶の特等席を確保しています。
第一想起に成功して、選ばれるブランドになるための大切なステップは、以下のとおりです。
想起の強さは、一朝一夕で築けるものではありませんが、一度定着すれば競合が容易には崩せない強力な資産となります。自社の現在地を正しく測定して、改善を繰り返すことで、ブランドの力は着実に積み重なっていきます。
顧客が困ったとき、真っ先にあなたの顔が浮かぶような関係性を築くための投資をはじめましょう。
